21/04/2026
「オンライン注文と店舗での受け取りサービスにおける問題にどう取り組むべきか」
この記事は、eコマース、特にネットスーパーが勢いを増している中、問題となっている不正問題を取り上げています。
「午後3時。午後の定番であるアールグレイティーを一口すすり、仕事が終わるまで元気でいられるカフェインの穏やかな刺激に感謝している。受信トレイの次のメールに目を向けると、同僚が何気なく妹の結婚式について話しているのが聞こえ、ハッと目を見開く。今日は自分の結婚記念日だったのだ。どうして忘れていたのだろう?
幸運なことに、今は2026年。スマホを手に取り、近くのデパートのアプリを開いて、奥さんのお気に入りの香水を選ぶ。あと数回タップすれば注文完了。帰宅途中に受け取るだけ。レジでちょっとしたお菓子も買って、プレゼントを甘くするのもいいかもしれない。ふう、危機一髪。」
消費者として、私たちのほとんどは、このシナリオで説明されているようなオンラインで購入し、店舗で受け取る(BOPIS:Buy Online Pick-up in Store)が提供する利便性をよく知っており、その恩恵を受けている。しかし、現代小売業のプロフェッショナルとして、我々はBOPIS戦略が重大な脆弱性も生み出すことを認識している。
BOPIS戦略:数字で見る分析
BOPISは、eコマースの登場とともに、買物客のオンラインと実店舗での小売体験を結びつける方法として生まれた。この方式では、買物客はオンラインで注文し、最寄りの店舗で商品を受け取ることができる。この方式自体は少なくとも2013年から存在しており、当時「クリック&コレクト」と呼ばれていたものが、マサチューセッツ州チェルムズフォードのストップ&ショップ(アメリカ東海岸に365店舗を持つスーパーマーケット)で試験的に導入された。
BOPISはパンデミック中に爆発的な人気を博した。顧客はソーシャルディスタンスによる安全性を求め、代わりに店頭で商品を受け取ることを選択したためである。BOPISを提供していなかった小売業者は、営業継続のために、新たにBOPISの導入を進めた。デジタルコマースプラットフォームのKIBOによると、同社の小売顧客におけるBOPIS注文は2020年から5倍以上になったという。
買物客の人数制限やソーシャルディスタンスの時代は終わったが、消費者はBOPISの利便性を手放してはいない。キャピタルワン・ショッピングのレポートによると、 2024年には9,720万人のアメリカ人が定期的にBOPISを利用した。これは、米国消費者の3分の1以上にあたります。センサマチック・ソリューションズの調査データによると、2025年の新学期シーズン(9月)には店舗での受取りが自宅配送よりも支持されていた(43%対38%)。リテイル・タッチポイント&デザインの「 2024 店舗オペレーション調査」によると、小売業者の回答者の81%がすでにBOPISを提供しているか、今後導入を予定している。
BOPISの利点
なぜ消費者はBOPISに強い関心を持ち続けているのだろうか。それは一言で言えば、利便性である。すぐに必要なものがある場合、宅配よりも手軽であり、また、在庫があるかどうかも確実である。店舗で商品を受け取る顧客は送料を支払う必要がなく、持ち帰る前に実際に手に取って商品を確認することができる。データも利便性を最優先事項としていることを裏付けている。2025年のFMIのレポートによると、オンラインでの食品を注文することは、時間に追われるミレニアル世代(1981年から1996年生まれ)、そして都会で忙しい生活を送る人々の間で特に人気が高いことが分かっている。
小売業者にとってのメリットは何だろうか。BOPISは顧客が望む場所で商品を受け取ることができるため、顧客ロイヤルティを高めることができ、来店客数を増やす効果も期待できる。また、BOPISは来店する顧客との直接的な接点となり、顧客との関係づくりに有効で、それが追加購買につなげる機会となる。キャピタルワン・ショッピングのレポートによると、BOPISを利用した顧客の85%が、注文商品を受け取りに来店した際に追加購入をしていることが分かっている。そして、店舗受け取りは、小売業者が配送に伴う煩雑な手続き、コスト、そして宅配に伴う不正行為のリスクを回避するというメリットもある。
こうした利点を考慮すると、BOPISはもうなくてはならないサービスといえるだろう。つまり、あらゆる規模や業種の小売業者は競争力を維持するためにBOPISを提供しなければならない。アメリカ最大手のスーパーマーケットであるクローガーのアセットプロテクション担当副社長を退任したマイク・ラムによると、店舗がBOPISを提供していない場合、顧客は他店に流れてしまうという。「オンラインで購入して店舗で受け取るサービスは今後も存続すると思います。顧客が何を求めているかは、財布で意思表示するのですから、継続してサービスを提供しなければなりません」とラムは述べている。
いくつかの複雑さ
パンデミック以降、小売業者や専門家はBOPISのプロセスの効率化に取り組んできた。オーバーン大学のRFIDラボの研究者たちは、小売業者がこの分野における自社の能力を分析・改善できるよう、2021年にBOPIS小売業者スコアカードを作成した。このスコアカードで示されているベストプラクティスには、以下のような要素が含まれる。
・ 場所ごとの正確な在庫数を確保する
・ オンライン商品検索および決済機能の微調整
・ 注文情報を顧客に明確かつ効率的に伝える
しかし、プロセス改善に注がれた努力にもかかわらず、BOPISを悪用して不正な目的を達成しようとする者の存在は大きく、その手口も巧妙である。冒頭の例の香水購入者が注文品を横取りして持ち帰ったり、注文を処理する店員が香水をもう1本無料で付けたりしたらどうなるか想像してみればわかる。「リスクのレベルが高まっている領域は複数あります」と、小売業界リーダー協会(RILA)のアセットプロテクション担当副社長であるクリス・ハムリンは述べている。
BOPISリスクの詳細な分析
BOPISを成功させるには、最初のオンライン取引の真正性、注文の準備、受け取りプロセスなど、複数の業務領域を同時に監視する必要がある。BOPISにおけるリスクを評価する際には、以下の点を考慮すべきである。
1. 取引の正当性:
世界のeコマース売上高は4兆ドルに達しており、オンライン決済詐欺による損失は2024年には約440億ドルと推定されている。BOPISはオンラインで注文されるので、小売業者はまずその取引の正当性を確認する必要がある。このシステムを悪用しようとする者は、漏洩した認証情報やボットを使って顧客の店舗アカウントを乗っ取ることが可能である。そして、保存された決済情報を使って、近隣の小売店で正規の注文に見える注文を行う。詐欺が発覚する頃には、商品はすでに彼らの手に渡っているというわけだ。
2. 商品のピックアップと出荷準備(荷づくり):
パンデミック後、小売業者は、BOPISを利用する消費者の注文受け取りプロセスを円滑にするために努力してきた。しかし、その注文準備エリアは、セキュリティを確保するためにある程度の制約が生じる。残念ながら、「BOPISでも不正行為は依然として発生している」と、FMIの業界関係担当副社長であるダグ・ベイカーは述べている。監視されていないエリアや改ざん可能な容器は、特にBOPIS注文品を保管しているラックが簡単に出口の近くにある場合、外部の人間による盗難も起こる。
3. ピックアップの問題と返品詐欺:
安全なピックアップエリアの設置に気を配ってきた店舗責任者でさえ、混雑時には課題に直面することになる。「特に複数の業務を兼任している店頭担当者は非常に忙しくなります」とハムリンは言う。「注文品のピッキング、顧客対応、そして荷物の持ち出しなど、やるべきことが山積みです。そのため、荷物を受け取る権限のない人に誤って荷物を渡してしまうといった事態が容易に起こり得ます。」
つまり、忙しい店員は、十分に確認する時間がなく、受取り手続きの際に時間をかけて身分証明書を確認したとしても、悪意を持つ者は偽造身分証明書を使う可能性もある。(生成AIの世界では「合成身分証明書詐欺」ははるかに容易な手段となっている。)
それだけでなく、オンラインで購入して店舗で返品する(BORIS)プロセスが十分に安全が担保されていない場合、返品詐欺は悪質な業者にとって魅力的な手段となる可能性がある。小売業者が取引全体を記録できない古いシステムの欠陥を抱えている場合、問題が発生することは十分に考えられる。包括的な商品追跡が行われていない場合、悪質な業者はBOPIS注文の内容を偽って申告することがあるだろう。「顧客が戻ってきて『ポロシャツを注文したのに、ポロシャツではないものを受け取った』と言って返金を要求するのはどれほど簡単なことだろうか」とハムリンは例を挙げて説明する。
4. 内部窃盗:
店舗の在庫ロス全体のうち、内部窃盗による損失がどれくらいなのかを正確に把握するのは困難である。だが、過去の推定では、この割合は全体の損失の約3分の1とされている。しかし、具体的なデータを把握するのは容易ではない。一つ確かなことは、BOPIS(およびBORIS)プロセスによって、従業員による不正利用の可能性のある新たな領域が生まれるということである。これらの領域には、以下のようなものがある。
・ 商品の横流し:BOPIS(オンライン注文・店舗受け取り)の注文で商品を選び、それを自分のものにしたり、共犯者に渡したりすること。
・ 共謀:正規の注文品を受け取りに来た顧客に、購入されていない追加の商品を渡すこと
・ 架空の返品:実際のBOPIS注文レシートを使用して、実際には店舗に返品されない返品を処理すること。
5. 第三者との連携:
この方法は配送分野でより一般的かもしれないが、一部の小売業者は、BOPISの注文を処理するためにサードパーティ(アメリカではドアダッシュ、インスタカードが有名。日本ならアマゾン?ウーバーイーツなどフードサービスの宅配業者も狙っている市場だ。)企業と連携することを選択している。実際には、これは、別の会社の人間が注文品を受け取りに来るという形をとるかもしれない。店舗と関係のない第三者の従業員は、小売業者に対する忠誠心がほとんど、あるいは全くなく、特に商品へ単独にアクセスを許可されている場合は、不正行為に対する良心の呵責を感じにくい可能性がある。ベイカーは、小売業者に「店舗内で実際に適切な管理を行い、盗難を増加させないようにするには、サードパーティーの従業員との関係をどのように管理すればよいか」考えることを勧めている。
LPができること
マイク・ラムは、BOPISやそれ以降のロス防止の対策を考える上で役立つ枠組みを提示している。その答えは、物理的な(店舗、駐車場、倉庫、人間などを対象にした)セキュリティ、テクノロジー、そして厳格な運用体制の組み合わせであるべきだというのだ。
BOPISのプロセスを最初から最後まで考えてみよう。まず、オンライン取引が始まる(つまりオーダー)ところから検証する必要がある。幸いなことに、今日のAIツールは、取引が行われている間にリアルタイムでリスクを評価し、オンラインでの行動パターンを照合してデータ異常を発見することで、小売業者が正当な顧客の購入と悪質な行為者を区別するのに効果を有する。たとえば、「顧客」が小売業者のサイトで高額商品にすぐに移動し、数秒以内にチェックアウトするものの、他の商品ページを見ていない場合、このテクノロジーは取引をレビュー対象としてフラグ付けすることができる。「小売業者は、eコマースプラットフォームで多くのリスクプロファイルアルゴリズムを使用しています」とハムリンは言う。このテクノロジーは、もはや必須のものになりつつある。
次に、BOPISでの注文を処理するプロセスだ。従業員であろうと、ピッキングと梱包を担当する第三者の協力者であろうと、小売業者はこれらの人々が仕事をうまくこなせるようにしなくてはならない。BOPIS注文処理プロセスは効率的に最適化されているか、チームに期待されることが明確に伝えられているか。従業員は他の業務と並行して注文を処理するのに十分な余裕があるかを確認しなくてはならない。「トレーニングが第一です」とベーカーは言う。「従業員にBOPISを管理するためのツールを与えましょう。」
業務上の厳格さは、客と従業員との共謀防止プロセスをBOPIS戦略の標準的な一部とすべきだという考え方と密接に関わっている。クローガーは、不正な取引の機会を減らすために、ランダムな注文ピッキングシステムを採用している。「ピッキングする従業員は顧客が誰なのか全く知りません」「彼らには注文番号しかありません。」という。
ラムは、BOPIS戦略の基本要素として監査プロセスを設けることも重要だと述べている。つまり、注文を処理した従業員以外の誰かが、注文内容が正しいことを二重チェックする必要があるということだ。「私がウォルマートにいた頃は、店舗のバックヤードにいるチームに対して厳格な監査プロセスが課せられていました」と彼は言う。「それに加えて、アセットプロテクション・チームによる監査も行われていたので、いわば『鶏小屋の番をする狐』のような状態にはならなかったのです。」
カメラの位置、スマート照明(自動点灯)、ピックアップ待ちのBOPIS注文品を制限区域に保管することも考慮すべき要素である。近年、セキュリティ対策が必要な区域は店舗の壁を越えて駐車場にまで広がっており、そこではカーブサイドピックアップ(従業員が車まで届ける)がよく行われる。このエリアは、特に夜間のピックアップ時や犯罪率の高い地域では、さらなる複雑さを招きくことになる。「BOPIS取引を通じて、従業員と顧客の安全を常に考慮しています」と、遠隔セキュリティ技術会社LVTの上級副社長マット・ケリーは述べている。
かつてホームデポで10年以上にわたりセキュリティを担当していたケリーは、多くの不正問題に対処するための対策が講じられてきたものの、取引に関わる人々、特に駐車場で商品の受け渡しにかかわる人々の身体的な安全は、依然として大きな懸念事項であると述べている。「小売店が地域社会、最前線の従業員、そして顧客の安全を守るための投資を行っていない場合、人々はその店舗に行くことをためらうかもしれません。」
そのような状況の中での朗報は、新しい先進的な監視技術が、望ましくない行動に対応する完全自動化された抑止機能と未然防止機能としての警告システムを備えていることである。「さまざまなモデルと処理能力で生成AIを活用し、視覚的および聴覚的な手がかりを使用して行動を認識し、通常とは異なる状態がどのようなものかを把握できることに期待しています」とケリーは説明する。「高額なテレビをベストバイから駐車場で受け取りに持ち出そうとしている従業員に誰かが近づくのは普通のことでしょうか?おそらく、それが店内のセキュリティシステムからの反応を引き起こし、そのエリアが監視されていることをセキュリティ担当者に知らせ、そのような行為を阻止しようとすることが可能になります。」
BOPISの最終ステップである、店員から顧客への注文の受け渡しでは、注文が正しく、注文した顧客の手に渡ることが非常に重要なのは言うまでもない。これを確実にするために、いくつかのテクノロジーが開発されている。顧客の名前やIDだけでなく、一部の小売業者は、顧客のモバイルアプリからスキャンする必要のある独自のQRコードを使用している。ハムリンは、同様のテクノロジーについて詳しく説明している。「商品が受け取り可能になると、消費者にコードをテキストメッセージで送信し、消費者はバッグを受け取る人にそのコードを伝えなければ、バッグを渡すことができません。」これは、注文したジェーン・スミスが、商品を受け取るジェーン・スミスと同一人物であることを確認するための追加措置である。
AI顔認識ツールは2026年にも普及が進むと予想されている。これらのツールは、BOPISの顧客の中から常習犯を特定するのに役立つ。「法的な観点から見ても、小売業者はこうしたツールを用いることに抵抗を感じなくなってきています」とベーカーは指摘する。「セキュリティと安全性をプライバシーとバランスよく両立させているのです。」
最後に、LPの専門家は、BOPISのリスク軽減対策を強化するために、警察当局との官民連携が重要であると認識している。多くの地域でリアルタイム犯罪センター(RTCC)が登場したことで、悪質な人物の特定、捜査期間の短縮、万引犯や詐欺犯の迅速な逮捕に役立っている。ケリーによると、RTCCでは、小売業者は店内のテクノロジーで収集した情報を地元の警察に送信し、対応が必要な実用的データを提供するだけでなく、現場に第一対応者を派遣する際に何が起こっているのかという状況も提供することで、適切な対応を可能にしているという。
今後の展望
ロス対策という大きな枠組みの中で、BOPISのリスクは最優先事項ではないかもしれない。ラムによれば、「ORC(組織的窃盗犯罪)、セルフレジ不正、閉店中に起こるあらゆる問題」に比べてみると。しかし、だからといって無視できるわけではない。パンデミック後の時代においても消費者の間でBOPISの人気は今後も衰えることはないだろう。そして、新しいテクノロジーは、その成長と拡大を後押ししていることも事実である。
例えば、エージェントコマースでは、どのようなギャップや盲点が生じるのだろうか?それは時が経てば明らかになるだろう。せめて、あなたに対してショッピングサポートAIがあなたの記念日、例えば結婚記念日を覚えていてくれることを願うばかりである。
In 2026, retailers must strengthen fraud controls and security to protect BOPIS operations while maintaining customer convenience.